キャッチコピーというのは広告コピーの見出し・・いわゆる掴みの部分ですね。
僕がある印刷会社の企画室で漸くデザインをさせて貰えるようになった頃ですから、亡くなってもう30年近くなると思いますが、ジョン・ケイプルズという広告界の伝説的巨人が、著書「Tested Advertising Methods」の中で、ビジュアル・ボディコピー共にほぼ同様の広告で、キャッチコピーだけを変え、最大19.5倍売り上げに差が出たと述べています。
これは売れてる方がすごいというより、失敗の方がやらかし過ぎなんだと思いますが、クライアントさんだけでなく実はデザイナーでも案外多いのが、何の広告だか分からないようなキャッチコピーで、誰も読んでいないというやつです。
例えば「未来のニューマシン登場!」・・・ふ~ん、で終わりますよね(^^;)
車?バイク?掃除機?ゲーム機?何だか分かりません。ビジュアルが無ければ分からないようなコピーではダメです。
忙しい現代人はボディコピーまで読んでくれません。キャッチコピーだけで除外されてしまいます。
売りたい物の本質を伝えた上で不要と判断されるのは仕方のない事ですが、売りたい物が何なのか気付かれないままスルーされるのは、明らかにデザイナーのミスです。
商品力が同じで、19.5倍の差が出るという事は、19.5倍の人が気付かなかったという事です。マーケットシェア=広告シェアと言われていますが、この広告シェアが何かといえば露出です。先の失敗キャッチコピーの広告は195000枚のチラシを打っても10000枚しか打っていないのと同じだという事です。勿体ないですね。
さてここまでは基本中の基本の話です。
ここからもう少し掘り下げます。
このジョン・ケイプルズを一躍有名にしたキャッチコピーが、
「私がピアノの前に座るとみんなが笑いました。
しかし、弾き始めると・・・・・!」
というピアノの通信講座のキャッチコピーです。
上記のように日本語にすると今イチつまらないコピーですが原文は、
「They Laughed When I Sat Down At the Piano
But When I Started to Play!~」
何に関する広告なのかを一人称で主観的に認知させ、しっかりボディコピーへ誘導しているだけでなく、
語呂も文字の姿も美しいですね。
あまりにも有名なコピーですので、日本でも本当に多くのデザイナーやコピーライターがこのコピーをアレンジしたキャッチコピーを作られていますが、日本語訳しか見られていないためか、一人称の表現や言い回しだけに意識がいき、文字の姿にまで気が回っていない広告が多い様に思います。
人は言葉の姿でその意味やニュアンスを繊細に捉えます。和歌や俳句を読んだ時に、同じ言葉でも漢字とひらがなで心に浮かぶ映像が異なるのはそのせいです。
仕事ですから能率的に考える事を頭から否定するつもりはありませんが、大河の本流を歩いた巨人の著書だけを読みかじって、浅瀬を横切るような仕事だけはしないように気をつけたいですね。