最近の若者言葉を聞いていると、時々戸惑うことがありませんか。
「このデザイン、エグいですね!」
私と同世代の方なら、否定的な評価にも聞こえるかもしれません。しかし今では「すごい」「圧倒的」「最高」といった意味で使われることも少なくありません。

他にも、「沼る」「〇〇界隈」など、本来の意味から少しずつニュアンスが変化した言葉が数多くあります。こうした変化を見ると、「最近の若者は言葉を乱している」と感じる方もいるかもしれません。
ところが、この感覚は実は700年ほど前にも存在していました。日本で最初の批評文とも言える『徒然草』第22段で、兼好はこんなことを書いています。

「何事も、古き世のみぞ慕はしき。今様は、無下にいやしくこそなりゆくめれ。」

何事も昔の方が良かった、と言うのです。そして続けて、「昔は『車もたげよ』『火かかげよ』と言ったのに、今の人は『もてあげよ』『かきあげよ』と言う」と、当時の新しい言葉遣いを嘆いています。

つまり鎌倉時代の人々も、「最近の若者の言葉はなっとらん」と言っていたわけです。
さらに面白いのは、兼好が引用している「古き人」の言葉の方が、現代人にはしっくりきませんか?
言葉は様々に変化を繰り返し、取捨選択され、残るものは数百年生き続けます。
言葉は生き物です。言葉は固定されたものではありません。
実際、言語学の研究でも、言葉の意味は時代とともに変化し続けることが示されています。特に多義的な言葉ほど変化しやすい傾向があるとされています。
「ヤバい」が危険だけでなく賞賛の意味でも使われるようになったように、言葉は社会や文化の変化と共に姿を変えます。むしろ変化しない言葉の方が珍しいのかもしれません。

私たちがデザインする広告や販促物のコピーライティングでも、この「言葉の変化」は非常に重要です。若い世代に向けた広告で、20年前の感覚の言葉ばかりを使えば、どうしても距離感が生まれます。反対に、流行語を無理に詰め込み過ぎると、今度は軽薄に見えたり、ほんの数か月後には古臭く見えたりする危険があります。
コピーライティングに求められるのは、「今伝わること」と「長く伝わること」のバランスです。流行を知りながら、流行だけに依存しない。これは広告表現において非常に大切な視点だと考えています。

また、デザイナーとして特に意識したいのは、言葉には意味だけでなく、「見た目の姿」「音の姿」もあるということ。例えば、「やわらかい」と「柔らかい」では、同じ意味でも受ける印象が少し違います。「ふわり」と「フワリ」でも同様です。また、「凛とした」と「りんとした」では、目に入った瞬間の印象が変わります。さらに「音の響き」も伝わり方に大きく影響します。優れたコピーは、意味だけで成立しているわけではありません。見た目にも美しく、読んだときの音にも心地よさがある。だからこそ記憶に残るのです。

言葉をデザインの一部として捉えることはとても重要です。
言葉は単なる情報ではありません。「意味を持ち」「音を持ち」「形を持ち」時代とともに人々の印象を形作っていきます。
700年前の兼好法師が嘆いた言葉も、今となっては歴史の一部です。そして、私たちが今当たり前に使っている言葉も、100年後には全く違うものになっているかもしれません。
しかし、遥か昔の短歌でも、我々日本人ならば瞬時に共感できるような、全く変わらない価値観も存在するのです。
だからこそ大切なのは、「正しい言葉」を探すことではなく、「相手に届く言葉」を選ぶこと。
言葉もまたデザインするものなのです。