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もう二月も終盤、開花が遅れに遅れた寒緋桜が気がつけば葉桜になっていました。
寒緋桜というネーミングは、つまり寒い時季に咲く緋色の桜という事なんでしょうね。緋色というのは最古の赤の原料である茜草の根が素材で、いわゆる茜色と原料は同じなのですが、精製されているために、どちらかというと暗い赤の茜色に比べて明るい赤になります。日の丸の赤をネットで調べると紅色と出てきますが、これは平成11年に施行された国旗・国歌法によるものでしょう。紅はエジプトから中国経由で入ってきたベニバナの色素を用いたもので、実は日の丸は元々茜草で染められていたという話もあります。それなら茜色とするべきじゃないかなと思ったりするのですが、色に関しては原料が時代と共にどんどん変わってきている事もあり、何が正解なのかハッキリ言って全く分かりません。実際はどんな赤だったんでしょうね。
業平が読んだ「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは」の「からくれない」は、漢字で書くと「唐紅」で、いわゆる金赤と呼ぶM100+Y100よりは若干マゼンダがちの鮮やかな赤の事ですが、同じ色の事を江戸時代になると「唐緋色」と呼んだようです。これは鎌倉時代以降に茜草とベニバナ色素の混合原料で赤を作るようになったために、緋色と紅色の境が曖昧になっていったのかな?なんて想像したりします。
茜色の夕焼けってよく言いますが、実際の茜色の空は不吉さを感じるような濃い燃えるような赤の夕焼けで、よく見られる黄色みがかった赤の夕焼けは、どちらかと言えば緋色の夕焼けなんですよね。

高校生の時に学校の図書館で見つけた、確か「油絵の技法」という名前の本だったと思いますが、その古い古い本に、ある印象派の画家が使っていた絵具のリストがありました。高校当時その絵具を全て揃えようとしたのですが、アリザリンクリムソンという名前の絵具だけがどうしても見つからずに、仕方なく「クリムソンレーキ」という名前の絵具を購入しました。
アリザリンクリムソンのアリザリンというのは、西洋茜の根を精製した赤の成分で、成分的には日本の緋色と同じです。クリムソンはカイガラムシという昆虫の仲間から採ったコチニールという色素を使った赤。
でもって、この二つの原料を混ぜて作った赤だからアリザリンクリムソンなのか、近代に発明された合成アリザリンを使って、クリムソンぽく作った色だからアリザリンクリムソンなのかが未だに分かりません。後者だったら色味はクリムソンレーキと変わらないと思いますが、前者だったら色が違うんじゃないかなって。。もし、ご存じの方がいらっしゃったら、お教えいただけますと大変嬉しいです。

さて今月末で徳之島の島民になって丸3年です。足りないものは沢山ありますが、ここにしかないものも沢山あります。美術館はありませんが、コローの森もクールベの海もミレーの夕景も、リアルに眼前に広がっています。
茜色の夕焼けも、緋色の夕焼けもね。