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以前のブログ(バックナンバー2017.9.15)で透明の名刺のご紹介をさせて頂きました。透明の名刺を作成する場合、色をはっきり認識させるためには、色を印刷した背景にホワイトインクを重ねて印刷する必要があります。これはインクが半透明のため、白の裏打ちをしなければ透けてしまってハッキリ見えないためです。
CMYKの4色で印刷する標準的なオフセット印刷では、通常クロ→シアン→マゼンダ→イエローの順に印刷しますが、いわゆる真っ赤と表現する金赤はM100+Y100で網点ではなくベタ印刷なのにイエローではなく、ちゃんと真っ赤に見えるのはマゼンダが透けて見えているからですね。
首題の答えはもうお分かりですね。アルミ蒸着した銀色の折り紙に濃い赤金はオレンジを、淡い青金は黄色を印刷して製造しています。今ではインクや溶剤も進化して、違った手法の物も登場していますが、僕がデザインを始めた数十年前は、パッケージなどの金色も同様でそれが主流でした。
さてここからが本当の雑学です。
では油絵はどうでしょう?油絵具は不透明ですよね?でも実は同じ理屈を利用したグレーズ技法という方法があります。油絵具の原料は色ごとに異なります。例えばアイボリーブラックは炭素化した牛骨(昔は象牙)、チタニウムホワイトはチタン、コバルトブルーはアルミン酸コバルトの様にまったく違う素材からできています。それらの素材にリンシードオイルなどを混ぜキャンバスに定着しやすくしたものが油絵具です。チタンの様に安定した金属が原料の絵具ならあまり問題はないのですが、昔は鉛を原料とするシルバーホワイトしかありませんでした。ですが鉛白はバーミリオンなどの硫黄系顔料と非常に相性が悪く、混ぜると化学反応を起こして硫化鉛を生成し黒く変色してしまいます。困った画家が考え出したのが、シルバーホワイトなどの混合できない絵具が完全に乾いた上に、松ヤニを原料としたダンマルなどの樹脂系溶剤を混ぜ半透明にした絵具を上から重ねて視覚的に混合色を作る方法でした。この技法はヤン・ファン・アイクが開発したと言われていますが、600年も前に描かれた絵画があの美しい発色を保っているのは驚きですね。僕がこの技法を初めて知ったのは、高校1年の時、たまたま図書館で見つけた「油絵の技法」という本でした。もう35年以上前の話で、6cmくらい厚みのある濃い赤の上製本仕上げで当時既にかなり古さを感じさせる本でしたが、今でも強烈に記憶に残っています。油絵にドハマりして将来は画家になると思っていたガキンチョには、この本を読んで油絵の事なんて何にも分かってないとハンマーでぶん殴られたような衝撃でした。
思い返せば、自然を含めたあらゆる物の色の見方が深くなり、色彩感覚が自然に身についたのはこの本との出会いが原点だったと思います。
若い頃に出会った本の影響は大きいですね、結果的にデザインの方へ進んだわけですが、土台の一部にはなっているように思います。
中学校時に読んだ某株式投資家の「お金持ちになる方法」は全く身についてないようですが(^^;)