昔々、ワンダーシビックのCMでルイ・アームストロングの「What a wonderful world~この素晴らしき世界~」が使われていました。僕達の世代は「What a wonderful world」を聞くだけで昔のホンダシビックの後ろ姿が目に浮かびます。
殆どのCMには音と映像がありますが、実は脳皮質には音と映像は別々に記憶されています。我々の率直な意識としては一つのエピソード毎にまとめて記憶しているような感覚がありますが、脳内で合成されて意識に供給されるための一種の錯覚だそうです。
運動会のBGMで定番のクシコスポストを耳にしたらリレーの風景、小学校の校舎や朝礼台、マイクを通した先生の声までが在り在りと脳裏に浮かぶのも、関連する観念を意識の表面に浮かび上がらせ合成するからなんですね。
更に驚いたことに実は右目と左目、右耳と左耳など一対で連携するような感覚器にしても、左右それぞれ別々に記憶されているそうです。我々は左右の目からの情報の差異と実体験からの情報を蓄積し、脳内で総合的に判断して経験的に外界を立体的に捉えますが、これらの感覚が経験によって形成されることは、幼少期の子供がやたら物にぶつかるのが成長と共に距離感を正確に捉える事で減少する事や、生まれてからずっと片目が見えない方が、大人になって後天的に外科的方法で両目の視力を手に入れたとしても、外界を立体的に捉える感覚が修復されないことからも明らかです。
確かアリゾナ大学だったような気がしますが、近年の研究で右耳と左耳の役割が違うというような論文を発表してましたね。
CMが使用する音楽のチョイスに神経を使うのは、その曲を聴く度に消費者が自社の商品を思い出してくれるからですが、ドラゴンボールのスカウターのように片目にしか情報を供給しない様な端末が日常的に使用されるようになった時に、人間の脳はどの様に記憶を総合し、どの様な観念を心の水面に描くのでしょう?
未来の子供達の眼前にも、緑の木々やバラの花が語りかける「この素晴らしき世界」が広がっていることを祈るのみです。