皆様こんにちは。
以前少し触れましたが、「基本的需要広告」「選択的需要広告」に関して簡単に説明します。あくまでも勤務デザイナー時代、実務の中で先輩から教えられた知識です。いわゆる経済学など学問としての定義とは少し違うかもしれませんがご勘弁を。

「基本的需要広告」は、例えばそれまでラジオしかなかったところにテレビが商品化されたとします。世間はまだテレビが何なのか知りません。この段階では「今まで音しか聞こえなかったラジオに代わり、映像まで見る事ができるテレビが新発売されます」と、テレビの基本的な機能に関する需要を喚起するだけで競合も少ないので売り上げは上がりますよね?この段階では、テレビは女子高に放たれた若くてピチピチの男前です。表を歩くだけで引く手あまた。
ところがテレビがどんどん普及して、ライバル企業が増え、供給が需要を上回ると「有機ELで超軽量薄型の〇〇テレビがARTBOBより登場」、「まるでコンサートホールにいるような臨場感!音で選ぶならARTBOBの△△テレビ」のように多くのテレビの中から自社のテレビを選択してもらうための行動理由が必要になってきます。このような広告を「選択的需要広告」といいます。需要側の様々な選択理由、例えば「やっぱり顔で選ぶ」「断然スポーツマンがいい」「なんといっても経済力」など特定のニーズに特化して、個性を際立たせ、自分を売り込むわけですね。

広告を打つ場合、自社の商品やサービスがどういうものかを客観的に捉え、自社を選択するための行動理由として、必要な情報を訴える事が出来ているかしっかり見極める必要があります。例えば中古マンションの仲介で一般契約の場合、同じ物件の広告が複数の不動産業者から大量に入ります。この場合、商品は全く同じですから物件の良さを訴えるだけの「基本的需要広告」では、ブランディングできている地域最大手の不動産会社の応援広告を打ってるのと同じです。なんだかんだと言っても価格も商品も同じなら大部分の人は「家柄(ブランド)」で選びます。「選択的需要広告」で多くの不動産会社の中から自社を選択することのメリットをしっかり訴えることが必要です。

同じように失敗している例を最も多く見かけるのがパチンコ店の広告です。「新台入替!CR〇〇〇〇、スロット△△△」で、アニメなどのキャラクターがデカデカ掲載されている。しかも同じ時期にどこの店でも同じような台ばかり・・・。これだと市場が成長しているときはいいのですが、衰退期の競争を生き抜くことはまずできません。同じ商品ならブランディングできている全国チェーンをオーディエンスは選択します。広告規制で独自性を出すのが中々難しいのは承知していますが、「全館禁煙のクリーンルーム」「全席無音ヘッドホン装備で静かにプレイが可能」など、内容の良し悪しは別にして、何かしら「選択的需要広告」として自店を選択する行動理由を明示する必要があります。

人は分かれ道に来た時、何の道しるべもなければ一番太くて大きな道を選びます。自店へと続く細い道にどんな道しるべを立てれば自店へと導けるのか、その答えを一番知っているのは広告代理店ではなくその業界に一番長くいて沢山のお客さんを直に見ている貴方のはずです。
何も思いつかなければお店の名前だけ書いた看板でもいいのですよ。少なくとも全ての道の先にある事が分かっている「CRなんとか物語」と書いた看板よりは効果があります。その基本的需要広告は、「おっ新しいのがリリースされたんだな、いつもいってる〇〇〇〇にも入ってるはずだから行ってみよ」というドミナントの応援広告にしかなりません。クラス一番の人気者と同じ土俵で勝負するよりは、勝っているところを訴える方が彼女を捕まえる近道です。